学園祭間近
クラスでは、私は1人。
凛月も誰とも話さずに、窓の外を見ている。
「はぁ...」
「ねぇ、朝日奈さん、このテーブルクロスどうかなぁ〜」
「姫崎さん...うん、いいと思うよ」
テーブルクロスの方を見もせずに答えると、『そっかぁ』と嬉しそうに準備を始める姫崎さん。
いつもなら、手伝いに行くけど、今はそんな気分じゃなくて...
どんどん教室が飾り付けられていく中、動いているのはほとんど女子。
男子は衣装を着てみたり、看板の絵で遊んでみたり...
真面目な人は一人もいなくて
秋音は、昨日から私と話さないし、私が...避けちゃってるし
如月くんは...沢田さんと話してたり、沢田さんと笑ってたりしてる。
なんで、沢田さんといるんだろ?
沢田さんは、衣装を着たまま、如月くんと話してるから、きっとアピールでもしてるんだろう
仕事なんて一つもしてないけどね
荷物運んでって頼んだら、重いとかなんとか言って、如月くんに運んでもらって、買出し行ってって言ったら、姫崎さんが行ってるし
もう、意味わかんないよ
それからもこういう事は多々あって、うちのクラスが1番遅く、前日になってやっと内装ができた。
なのに
「なんだよ、このフリフリ!!」
「え?」
「テーブルクロス趣味悪!!つーか、カーテンもじゃん!!うわぁ...最悪じゃねえか」
「誰だよこんなの選んだやつ!!」
嘘、今更...
スッと手を挙げたのは、姫崎さんだった
「あの、その...」
「おい、姫崎!!こんなもん買ってきてどうすんだよ!女子しか入れねぇじゃん〜」
「ご、ごめんなさい」
「あ。」
その中で、女子が1人声を出した
「そういえばさ、朱理ちゃんもいいと思うとか言ってたよね?」
「は?マジかよ〜秋音の彼女趣味悪〜」
下品な笑い方を続ける男子達
私は恥ずかしくなって下を向いたけど
声はずっと聞こえてきて、まるで責められてるようで涙が出てきた。
泣くことも恥ずかしくて、バレないようにしてたけど、止まらなかった
「あ、朝日奈が泣いた〜、お前のせいだぞー」
「はぁ??俺じゃねぇし!つーかさ、秋音も趣味悪いんじゃね!!まさかの〜??」
また笑いが起こった。
その時
「あのさぁ」
誰かが声を出した。
その声は、私がよく知ってる声
「あんたらガキか」
凛月だ
「はぁ?何お前。」
「だから、今更そんなことでグズグズいうなんてガキかって言ってんの。」
「...じゃあ、お前はこんなフリフリの部屋がいいのかよ?お前も趣味わりぃな」
だめだ。男子の中でまた笑いが起こってる
「趣味どうのこうのは人の勝手。あんたらが言うことじゃないし、まずさ、なんで今まで気付かなかったの?テーブルクロスもカーテンも、結構前から付けてあったよ?」
「知らねぇよそんなの」
「そうだろうね、男子はサボってばっかで動くのは女子だけ。男子が遊んでるとき、女子は仕事。あんたらが周り見えてなかっただけでしょ?それをなんで姫崎だけ、責めてんのか意味わかんないんだけど」
「俺らちゃんと仕事してましたけど〜?」
「へぇ、何を?買出し?してないよね。女子が...姫崎が全部買ってきてたよ。他には何?看板?あんたら、遊んで壊しただけだし、結局描いたのは女子。なーんにもしてないよね」
「...」
「なのに、今更、あれが嫌だこれが嫌だって.........ふざけんな。なんで、真面目にしてる人をお前らみたいなサボってばっかの奴らが責めてんの?あんたらに責める権利なんかないよ。自分たちの言いたいことがあるなら、1からこの教室の内装全部男子達だけでやってみれば?」
「...」
男子たちが凛月の迫力に負けてる...
すごい...
「...プッ...ハハハハハハ!!マジかよ冬坂...。お前、なにガチになってんの?学園祭なんてお遊びだろーが。まじでキメェんだよ。そういうの、鬱陶しいわ」
「だよなぁ、な?如月」
「え?俺?」
男子はニヤニヤしながら、如月くんを見てた。すると、如月くんではなく、隣にいた沢田さんが答えた。
「ちょっと、冬樹くんは、そんなこと気にしてない!!私もちょっと冬坂さんの言ってることに疑問はあったけど...でも、冬樹くんに聞くのはおかしいよ!!」
え?
何言ってるの...?
これじゃ、まるで凛月が悪者じゃん...
「ほら、理解ある沢田は、俺らの意見に賛成だって」
「やっぱ、趣味の悪い人たちは、考え方も悪いんだなぁ〜」
「だな!ハハハハハハ」
なんで、なんでなんで...!!!
「はぁ...じゃあ、言わせてもらうけど」
「うわっ、また変な事言うよ」
「......沢田さん、あんたさ、自分の仕事もしないで何してたの?」
「え?」
「おい、沢田に突っかかんなよ」
「うるさいよ男子!!今冬坂さんは、沢田さんに聞いてるの。黙ってて!」
女子が一斉に男子に向かって叫んだ。
それには男子も驚いたようで黙ってしまった
「仕事?ちゃんとしてたよ?」
「はは...つくならもっとましな嘘つけば?」
「...え?」
「そんなに、如月が好き?だから、自分の仕事も人任せ?それは違うんじゃないの」
「ひ、人任せになんか...してないよ」
「あんたがそう思ってるならずーっとそう思っとけばいい。でも、朱理や、姫崎に、あんたが言えることはなにもないよ」
「.........っうぅ...」
「あ、冬坂が泣かせた〜最低なヤツじゃん〜」
「如月やめとけって、あんな性格ブス〜」
「...」
凛月の顔がどんどんどんどん真顔になっていって
「泣けばすむと思ってんじゃねぇよ」
「...ヒック......」
「仕事を任せられたのにその仕事をしなかった、その事実は泣いたって変わんないよ。」
「......」
「テーブルクロスが気に入らないなら、別になしでもいいし、カーテンは、開けとけばいいじゃん。そんな目立たないよ。もっと頭使ったら」
「...確かにそうだね!さっすが冬坂さん!」
「じゃあ、女子みんなでさ、テーブルクロスリメイクしようよ!」
「いいよいいよ!私、衣装の残りの布持ってるから、それも使お!」
女子たちが想像力豊かで本当に良かったと思う。
男子たちは居心地悪そうに目を合わせようともしない。
いつのまにか泣き止んだ沢田さんは
凛月を睨んでいた。
凛月はそんなこと、気にもとめずに、女子と話していた。
「...り、凛月!!」
「...朱理」
「ありがとう...!ほんとに、助かった」
「別に、ただ、親友が泣いてるのに、ほっとく奴いないでしょ?」
「...私が親友でいいの?」
すると、呆れたように
「あんたがいいの。確かに、嘘を疲れてたのは傷ついた。でも、前から薄々気づいてたし」
「えっ!?き、気づいてた!? 」
「うん」
「何で!?」
「だって、あの鈍感な上村でも気づいたんだよ?ずーっと親友として隣にいた私が気づかないとでも?」
「...確かに...はは、じゃあ私何してたんだろ...早くいえばよかったなぁ...」
「後悔先に立たず、だね」
「ハハハ、そうだね!」
こうして、学園祭前日。
トラブルばかりの日。
そして、
仲直りできた日は、過ぎていった。


