え.........?




「...俺、如月だけど?」


「え?か、上村くん...は?」


「秋音?秋音は...ほら、あそこで笑ってるやつ」



如月くんという男の子は、私が大好きな上村くんを指さした。


でもそこにいたのは


チャラい感じの男の子。
制服を着崩した、男の子。



「あ、あなたはき、如月くんなんですか?」


「俺は如月。で、あっちが上村」




う、嘘......!!?


私...名前を間違えてた!?


ううん、そんなことない!

入学式の時に、みんなが、噂してるの聞いたし、ちゃんと確かめた...はず。



え、嘘でしょ...。



「そ、そうですか。ありがとう、ございます...」


「...」



すぐに自分のクラスへ戻り、凛月に話したい!!

この恥ずかしい話を!!


そう思っていたのに



「朝日奈さんっ!!お願い!今日、上村くんと、山田と北野と遊ぶんだけど、来てくれないかなっ??冬坂さんは、オッケイしてくれたんだけど!!」


「え?あ、...」


「いいじゃん、朱理、チャンスだよ」


「...そ、そうだけど」


「ねっ?お願い!!朝日奈さんっ!!!」



同じクラスの子が手を合わせてお願いしてくる中、凛月も私の答えを待っている。


この、空気の中で、勘違いでしたっ!なんて言いにくい...

私が好きなのは如月くんで、上村くんは苦手タイプだったなんて尚更言いにくいよ...


「わ、分かった。いいよ」


「ほんと!?やった!ありがとう!じゃ、放課後ね!」


「あ、うん」



クラスの子が去った後、私は凛月に向き直った。



「良かったじゃん、いいタイミングでこんな機会に恵まれて」


「そう、だね...」


「どうしたの?嫌だった?」


「あ、いや、そういう訳じゃないんだけど」


「そ?あ、そろそろチャイムなるから、席座ろう?」


「そうだね」




大丈夫、私が勘違いしてたことを言わなかったらいい。
そのうち、そのうち話せばいいよね...




そう思ってたまま放課後になり、上村くんとご対面の時間に



「こんちはっ!上村秋音です」


「こんにちは...朝日奈、朱理です」




にこやかに挨拶をする上村くんはすごい私を見てくる。

やだな、やだな。


凛月は、北野くんと話して...いや、一方的に北野くんが話していて、クラスメイトの橘さんは山田くんとふざけあっていた。つまりは、私は上村くんとはなさないといけないわけで、



「ねぇ、朝日奈さんって、好きなものとかないの?」


「え、あ、手芸とか?」


「へぇ、女の子っぽいね!」


「そんなことはないよ...」



罪悪感がぁ...



そのまま私はぎこちなく接していて、どんどん質問攻めにされてしまった。

でも、すごくすごく不運な事は起こってしまう。




帰りのバスの中、偶然にも私と上村くんは一緒のバスで、隣に座っていた。
それだけでも、気まずいのに



「...俺さ、朝日奈さんのこと、前から気になってて、今日あえて良かった。良かったらさ、メール交換しない?」


「えっ」


「ダメ?」



子犬のように見つめてくる上村くんを、断ることは出来なかった。






そのあともずっとメールのやり取りは続いて、ある日図書室に呼び出された。