私の恋は、ずるいですか?



図書館は思ったよりも人は少なく静かだった。

これだったら勉強も集中してできるだろうけど、今の状況だったら、ドキドキが聞こえそうで怖い。




「隅のほうで話そう」


「...あ、うん」



来る時もそうだったけど、会話なんて全然なく、目も合わなかった。






あぁ〜...嫌だなぁ
机に着けば話さなきゃいけなくなる。

でも帰れば後悔する。

一瞬の勇気さえあればいいのに...
その勇気が全然出ないから困ってる



あぁどうしよう。席はもう目の前だ。
本当に隅のほうまで来たから、人は一人もいなくて、本棚でここはあまり見えないところ。

椅子をガタッと引き如月は椅子に座る。

そして不思議そうに私を見て


「座らないの?」


と問いかけてきた。
慌てて私は『す、座る!』と言ったけど

それからというもの、話し始めるきっかけがなく沈黙。
なにこの沈黙。居心地悪いな...


「............あぁ...久しぶり...ですね」


「え?あ、そうなるね。」



私が勝手に終わらせてから1ヶ月以上たってるしね


「何してた?夏休み」


「勉強以外にやることないでしょ」


「ハハッ、確かにそうだね。俺もそう。」




へぇ。沢田さんと夏休みも遊んだんだ。
そりゃあまぁ、キスまでした仲だもんねぇ??



と心の中でフツフツも湧き出て来る怒りを抑えるために窓の外を見た。

まだ雨は強く降っていた



「如月。如月はこの1ヶ月......長かった?」


窓の外を見ながらそう質問する。
断じて、目を見れないとかではない。


「......長かった」


「そう...。私は短かった。」



毎日いろんな感情と向き合ってたら、いつの間にか1ヶ月たってた感じ。
むしろその1ヶ月は如月のこと以外考えていないと言っても過言ではないほど



「如月。」


私がもう一度呼ぶと、返事はなく、ただこちらを見つめているのがわかった。
そっと窓の外から視線を外し
しっかりと如月の目を見る



「私はね、如月の邪魔はしたくないよ」


「...え?」


「一学期の期末のテスト......点数悪かったんだって?」



自惚れじゃなかったら、きっと如月もあのことを考えていたんじゃないか...なんて、考えてた。
まず、ひとつはそれを伝えなきゃいけないと思った。


「なんで知ってるの?俺の成績」


「...謝りたい」


「話がかみ合ってないんだけど」



真剣な表情の如月は、いつもの何倍も怖かった。
元から表情が読み取りにくいところはあった。
だから、嫌いだったのかもしれない。


「あんな自分勝手な事言って、勉強の妨げをしてしまったこと。謝りたかった」


「...」


「夏休みに入る前に、本当は言うべきだったけど......言えなくて」


「...」


「...っ、なんか言ってよ...」


「...俺は、別に妨げになってたわけじゃない。そういうのは割り切れるタイプだから。でも、俺が気になったのは、なんで急にあんなことを言ったのか、それだけ。」


「...あの時は、自分がよくわかってなかったから。」


「それって、理由になってなくない?説明、して欲しいんだけど」


なんだなんだ、今日に限っていっぱい追い詰めてくるじゃん...
まぁ、
“そうなんだ”
で片付けてくれるほど甘くないって言うのは分かってたんだけど...



「辛かった...から。結局。めんどくさかったって言うのも、一理あるんだけど...」


「俺と関わるのが辛くてめんどくさかっわけ?」


「...そういう、意味ではないんだけど、でも、如月と関わることで私に降り掛かってくるものは大きかったっていうか、なんて説明したらいいか、分かんないけど」


「良い言葉選んで説明しなくていい。汚い言葉で説明してくれたら、それでいい」


「...じゃあ、簡単にいうと、呼び出しが、ちょっとキツかったしめんどくさかった...から」


「...呼び出しって、遠足の時も呼び出されてたけど、ああいうの?」


まぁ、もっと凄いのはあったけど


「まぁ、大体は...?」


「そうか...じゃあそれが無くなれば、また俺と関わってくれるってこと?」


「いやそれは無理でしょ」


「は?なんで...??」



いや、なんでって...あんた、私は沢田さんに言われてるんだよ?
って、そのことを知らないから分かんないのは当たり前だけどさ

キスまでした仲なら、もちろん付き合ってる...んだよね?

だったら、私なんかと仲良くしたらダメなのはアホでも理解できるでしょ?


「彼女に...悪いからダメなんだよ。」


「彼女??誰だよ、それ」


「さ、沢田さん.........」


「はぁ!?」


「ちょ、静かに!!」



慌てて口を抑えた如月はまだ目を見開いていた。


「なんで、そんな風に思われてんの?」


「...いつも一緒にいたし、き、キキ...」


「キキキ?」


「......キス.........もしたんでしょ??じゃあカップルじゃんっ...」


これは二つ目に伝えたかったこと...なのかもしれない。



「キスゥ!?してないしてない!!!」


「はぁ?なんでそんな嘘つくわけ?」


「ついてないし、なんでそんな噂が...」



噂じゃない...沢田さんが言ってたんだよ...
だから、まぁ真実...


「本人が言ってたんだからそりゃ事実でしょ?」


「本人って俺?」


「違うわ、相手の、ほう」


「.........沢田さん...??」


「そうだけど...ってそんなのはどうでも良くて...私は言いたいこと言い終わったから、帰るっ...」


「...待って。俺の言いたい事は聞かないつもり?」



やっぱり...そう来るか...

聞きたくない...
聞きたくないよ...




...でも



「いいよ。聞いてあげる」


「...はは、素直じゃない...俺は冬坂さんの事が好きだよ、今も」


「は...はぁ??今更...そんなの信じれるわけないじゃん」


「最後まで聞けよ...俺は沢田さんとは何でもないし、冬坂さんの事を諦めた覚えもない。でも、冬坂さんがたまに分かんないんだ」


「分かんない...?」



当たり前でしょ。私はあなたに何も伝えてないんだから

なのに、私のことを知ったような口で語られたらたまったもんじゃない。



「わかんないのは当然。私のことを熟知してたら怖いしね」


「うん、まぁそうなんだけど...あぁもう!!ストレートに言うと!」



いきなり大声で、しかも顔を近づけてきた。


「ちょ近い...こんなとこ誰かに見られたら...」


そう言いかけた時、不運は訪れる



「...冬樹...くんと...冬坂さん...何してるの?」


「あっ...」


「あれ?沢田さん...」



ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ...
どうしよう......しゃべらないって言ってたのに...喋ってるの見られた...


どうしよ、ショック受けてるよね...



ちらっと沢田さんを見ると


えっ...?




そこには、見たことのない、怒りを噛み殺したような表情をした沢田さんがいた。



「さ、沢田さん!!これは、違うから」


「何が違うの...?協力してくれるって言ったよね!?なんで一緒にいるの!」


「違う、これは、その...」


答えられないでいる私に助け舟を出したのは如月だった。でも今、その助け舟はいらなかったかも...そんなの、あたしを庇ってるみたいで、逆効果なんじゃ...



「...っ」


怒った表情で図書館から出ていく沢田さん。
本当に悪いことをしちゃった...
どうしよう、すごい怒ってた...夏休み明け、また呼び出しだ..




どうしよう〜〜〜〜〜!!