家に帰ると、リビングの机に置き手紙が。



『凛月へ
お母さんは少し仕事で帰るのが遅くなります。夜ご飯はいりません。お兄ちゃんも大学のサークルの集まりで一日いません。お父さんは多分いつも通り帰ってくると思います。夜ご飯は適当に何か食べて。
お母さんより』



へぇ...てことは今日はほとんど1人ってことか...
お父さんもどうせ日にちがかわってから帰ってくるだろうし



私は二回へ上がり、自分の部屋に鞄を置いて、制服から部屋着へ着替える

はぁ、今日も疲れた
ベッドに横になり天井を見つめていると
一通のメールが



「誰...?」



携帯を開くと、朱理からメールが届いていた。
内容は、夏休みの夏期講習についてだ。
私と朱理は行きたい大学が違う。

私は一人暮らしがしたいがために、地元を離れた少し遠いところにある大学。
朱理は、上村と同じ、地元の大学へ行く。



私が受ける大学は、私の学力じゃ合格ラインギリギリだ。
だから、夏休みの半分を夏期講習にしておいたんだけど
朱理が、じゃあ私もって言ってくれたから、一緒に行くことになった。


朱理は鈍感だけど頭が悪いわけじゃない。
むしろいい方だ。


「なのに、私に付き合ってくれるなんて、ほんとにいい子。」


返信をしながら私はまだ、着替えていないことを思い出して制服を脱いだ。



「...はぁ、もうお風呂入っちゃおうかな...」



まだ、4時半だけど...

いっか、どこにも行かないし、後は家でごろごろするだけだもんね



そう思って、自分の着替えを持ってバスルームへ直行した。









_______お風呂に入った後



いつのまにか五時を回っていて、そろそろ夕飯の準備を始めようと冷蔵庫を開けると、


「見事に何も無いな...」



お母さんは何も準備してかなかったの...??




「...どうしよ......」



私が悩んでいると、玄関の鍵が空いた音がした。


えっ...??
誰か...入ってきた?



そっとドアを開け覗くと




「何してるんだ。」

「なんだ...お父さんか」




スリッパを履いて歩いてくる父は、やっぱり私とどこか似ていると思う。



「お父さん、なんで、今日はこんなにはやいの?」

「あぁ、凛月が1人だって朝、夏海が騒いでたから、早く帰らせてもらった。」



夏海っていうのは私のお母さんの名前。
ちなみにお父さんの名前は晴人。


「へぇ。あ、お父さん、ご飯どうする?冷蔵庫は空っぽだよ」

「...また、夏海は買い物してきてないな...仕方ない。ピザでも頼むか 」

「うん。じゃあ、私はテレビでも見てるから、お風呂入ってきたら?」

「そうするよ。」



お父さんがネクタイを緩め、歩いていく


こんなことを言うのも変だけど、少しだけお父さんはイケメンの部類に入る...かもしれない。

お母さんはお父さんのどこが好きなんだろうなぁ。

やっぱ、落ち着いてるとことか?
落ち着きすぎて面白くないけどね。


「はぁ...」




やっぱり、このまま夏休みに入るのは、少し罪悪感がある。
如月は今、どうしてるんだろう。

本当に沢田さんのことが好きになったのかな?

だったらいいのに...

だったら、私も......



がチャッとドアが開く音でハッとする。


...今、私は何を考えてた?


「凛月、ピザ頼もうか。」

「あ、うん」

「どうした?」

「...なんでもない」

「...そうか」


電話でピザを頼むお父さんの後ろ姿を見て、今度はお父さんに聞きたくなった。


「ねぇ、お父さん。」


ちょうど電話が終わったタイミングで話しかける。


「なんだ?」

「お父さんはお母さんのどこが好きなの?」

「!?!?な、なんだ急に」

「え、分からないけど、いいじゃん聞かせてよ」

「だ、ダメだ。そんなのいう必要ないだろ」

「あーあ、そんな事言っていいんだ。お母さん悲しむと思うなぁ〜??はぁ〜〜」


わざとらしくため息を何度も何度もついていると

「〜っ!!わかった!分かったからため息をつくな!」


内心綺麗なガッツポーズを決め、興味津々にお父さんが話し始めるのを待つ。
そして、やっと決心したように話をしてくれた。


「...実は...父さんと夏海の出会いなんて、すごい最悪だったんだ。ある日、俺に告白して来た子がいたんだよ、もちろんその子は断ったんだけど、その場面を目撃した夏海が、俺に向かって叫んだんだよ。2階の窓から、『私は、冬坂晴人君のことが、大好きだよぉお!!!一目惚れでーーーす!!』って。」


「そ、それはお母さんらしいね...」

「だろ?その後から少しずつだけど仲良くなってたんだよ。その時も、『好きだよー?』とか、『なんで、振り向いてくれないの?』とか、ドストレートな言葉ばっかりかけてくるから焦ったよ」


「あはは...お母さん...」


「でも、突然パッタリ俺のクラスにも、どこにも現れなくなったんだ。大して俺は気にしてなかったけど、夏海がほかの男と付き合ったって噂聞いてから、なんかキレて、そしたら、気づいたんだよ」



お父さんが笑いながら


「あぁ、俺ってコイツ、いないとダメなんだ...って」


滅多に素直な言葉を聞かせてくれないとお母さんが怒っていたけど
めっっちゃ、話してくれてますが...


ていうか、


「お父さんってそんなキャラだったっけ? 」

「...凛月、さっき話した事は夏海には内緒だぞ」

「うん。それはいいんだけどさ、やっぱり、お母さんとお父さんって仲良すぎるよね。」



仲良すぎて、娘が少し引くよ


「そんなことはない。ていうか、凛月こそなんかないのか?そういう話は」



お父さんに聞かれた瞬間心臓がドキッとした。
話を必死にそらそうと頑張ってみても


「話をそらすな?なんだ?彼氏でもいるの?」


さっきとは打って変わって、いつものお父さん...いや、お母さんによくしている笑顔で
私に話しかけてきた。


...さっきの仕返しか...


「別に。ないよ。」

「......じゃあ、質問を変えて、もう一回俺が聞いてもいいか?」

「うん?なに?」

















「凛月は、今、楽しいか?」







お父さんの質問に、ためらわず答える事は




どうしても、出来なかった