講義室に戻ると、すぐに沢田さんが話しかけてきた。


「あ、冬樹くん、何かわかんない問題があるんでしょ?教えるよ!」

「...あぁ、ありがとう。でも、いいや。」

「え、...あ、そっか。わかった」




理科の問題がわかんないなんて、嘘だ。

ただ、冬坂さんと喋りたくて、口実を作っただけ

口実を作らないと喋れないなんて...超情ねぇじゃん、俺


前に一緒にタブルデートした日も、冬坂さんが絡まれてるの見て、“俺の彼女”なんて

勝手にも程があるよな...



「......ねぇ、如月くん。」

「...え?あ、朝日奈さん。どうかした?」

「...凛月は?」

「あぁ、ちょっと、気分が悪いからって言ってた。」

「そんなことは知ってる。私が聞いてるのは凛月を何で置いてきたかってこと。傷つけてないよね?」

「それは...」


いつも、笑顔の朝日奈さんの真剣な表情。

そういえば、俺って冬坂さんの、笑顔...まだ見たことないよな


「あのね、如月くん。凛月のこと、なーんにも知らないでしょ?」

「え?...」


確かに...俺って、冬坂さんのこと、全然知らない

じゃあ、なんで俺は


「如月くんはさ、凛月のどこを好きになったの?」


好きになったんだ?

同じ問いを自分の中でもしてみる。



......あぁ、思い出した。





あれは、去年の冬だ。