「あぁーもう疲れた〜」


「まだ30分しか勉強してないから。ほらグダってないでさっさと終わらせよ朱理」

「えーだってわかんないよ?」

「え?どの問題?」




今は講義室...という場所を借りて、クラスごとに勉強をしている。


もちろん、あの班で。


つまりは如月もいるわけで、なんだか集中出来なかった。



「あのね、この英語の意味がわかんないの」

「...あぁ、それは四字熟語が使われてるんだよ。それは...一石二鳥って意味だと思うよ」

「へぇ...頭いーんだね。冬坂ちゃんって」

「あんたいつから私のこと冬坂ちゃんって呼ぶようになったの?」

「今日〜」



ほんと、能天気。
ちらっと隣を見ると、私をガン見するへんな奴が。




「...なに?」

「いや、俺もわかんないとこがあるから」

「嘘つけ!!学年1位のくせして」

「ほんとだって、ほら、ここの問題」

「理科?」

「そう。俺、理科苦手なんだよね」

「...ふーん。...これは...」




私が説明している時も、如月はどこか上の空。


何かあった?

なんて、聞ける素直さを、私は持ち合わせていない。

だから、いつも聞けなくて後悔するんだ。



「...きさら...「冬坂さん!」


私が如月に声をかけようとすると、それはそれは怖い顔をした女子3人に名前を呼ばれてしまった。


「...何?」

「ちょっと、こっちきてよ。」

「...はぁ...朱理。ちょっと行ってくる」

「...うん」



少し不安そうに見つめる朱理に1度ニコって笑い、口パクで『大丈夫』と伝えてから、女子3人の後ろをついていった。


あーあ。先生いないからって勉強サボっちゃったわ

これ、この人たちのせいだから。

私は無実でーす。


そんなことを考えていると


「ねぇ!あんたさ、如月くんの何なわけ?今回だって、班が一緒になったからって調子乗ってんじゃないわよ。」

「そうよ。あんたなんて遊びよ。そうに決まってる」

「如月くんはあんたなんかより...」


女子の1人が何かを言おうとした時


「やめなよ!こんなこと、こんなことしたって冬樹くんが手に入ると思ってるの?」

「あ...」

「...沢田...さん?」



止めに入ったのは、図書委員長で、頭もいい沢田麻美さん。
確か...如月と同じ委員会だから仲いい...とか朱理が言ってた気がする



「...何よ。沢田さんだって嫌でしょ?ファンクラブにも入ってない冬坂さんに、如月くんを奪われるなんて!!」

「......確かに嫌だよ。でも、冬樹くんが選んだなら仕方ないでしょ」

「っ.....もういいわよ!行こ!」



3人はパタパタと走って行ってしまった。


あーらら。予想外の展開。



「...ねぇ、冬坂さん。大丈夫?」

「あ、うん。ありがとう沢田さん。」

「うん、いいの。冬樹くんが選んだ子だもん」


そう言って笑う沢田さん。
でも急に真剣な顔になって

「...冬坂さんは...冬樹くんのことが好き?」

「は?ありえないありえない!!むしろそんな噂立てられて迷惑してるくらいだもん」

「...じゃあ!」


突然大きな声を出したから一瞬ビクッとすると


「...じゃあ、こうしようよ。冬坂さんは今日から冬樹くんと喋らなきゃいい。そしたら、自然とその噂もなくなるでしょう?それに......私は冬樹くんのことが好き。だから...ね?協力してくれるよね?好きじゃないなら」

「......」


私はすぐには答えられなかった。


なんでかなんて分からない。


でも...



「いいよ...」




如月の事は好きじゃないんだし



協力したって



別に構わないはず