優也は失恋してから部活に没頭するようになった。
優也なりに前に進もうとしているのかな?
すごいな、私にはできない。
忘れたくて忘れられない。過去のことを引きずってちゃダメだとわかっていても、無理なんだ……どうしても。

「真由ちゃん!」

優香先輩から声をかけられた

「最近ぼーっとしてるけど大丈夫?」
「え、そうですか!?」
「うん…なんかあった?」
「え、いえ!なんにもないですよ!」
「そっか、大丈夫ならいいの!莉英ちゃんとお皿洗いしてきてくれる?」
「はいっりょーかいです!」

私は敬礼をして三品の元へ向かう。

「よし!皿洗いがんばろーう!」
「うん!てか、もーそろそろマネージャーになって2週間ってとこかな?」
「そうじゃない?もう2週間もたったんだーーー」
「んねー笑」
「三品ともこーやって話せるようになったし…よかった!」
「うち、最初は真由のこと嫌いだったよ」
「え?」


「龍の元カノだから。」


どうして?どうして三品が知ってるの?なんでなんでなんで?
中学校の友達でさえ知らないはずなのにどうしてなの?

「うち、龍と幼馴染みなんだよね。真由のことよく聞いてた。」
「嘘……」
「嘘じゃないよ。二人が別れた理由だって知ってる」
「それ以上言わないで!!」
「どうしたの二人共」

結花先輩が私を止めてくれた。
止めてくれなければ何をしていたかわからない。

「真由ちゃんはこっちに来て。莉英ちゃんは優香の方に」

私は結花先輩に引きずられるように体育館裏のベンチに座らされた。

「はい、これ」

結花先輩が水のペットボトルを差し出す。

「すいません…ありがとうございます」
「なにがあったのかはあえて聞かないけど、部活と私情の区別はつけようね」
「はい……」
「真由ちゃんが何を抱えてるのかしらないけど、頼ってくれてもいいんだよ?先輩に」

結花先輩が優しく笑った。
あぁ…もう止まらない

「え、ちょ、真由ちゃん!?え、ごめんごめんごめん!」
「いや…っ…ちが、くて…もうっ…うっ…とま、んない……」
「真由ちゃん…」

結花先輩は私が泣き止むまで背中をさすってくれた。
野球部のマネージャー先輩は二人共いい人だ。優しくて頼れて大人で…羨ましい…

「もう大丈夫?」
「はい…すいません」
「目晴れてるね…今日はなんか言い訳考えるから先帰っちゃって?」
「でも…っ」
「先輩に任せなさい」

真顔でグーッってやるんだもん、思わす笑ってしまう

「ぷっ…」
「こ、こら!先輩を笑わない!」
「すいません、へへ。じゃあ、お願いします…」
「ん!」

私はその後部員と先生に見つからないように家に帰宅した。

「龍……」

私が大好きだった人。
私の初恋の人。
私の心に傷をつけた人。
嫌いになりたいのに…まだ好きなの…?
彩華の彼氏になったのに…
頭がぐるぐるして涙が溢れて気持ちが悪くなって私はトイレで吐いてしまった。

「うっ……」

私の目線は急に横向きになった。
いつもは下にあるはずの床がすぐそこにある。なんで?
あ、そうか…倒れたんだ…はは。

「もう……いやだ、よ…………」

私の記憶はそこで途切れてしまった。