ハルとオオカミ



誰からの影響も受けず、流されず、確固たる自分を持って生きていくひとだと思ってたから。そんなひと、いるわけないのに。

私ってば、また五十嵐くんに勝手なイメージを抱いてた。悪い癖だな……。反省。


なにはともあれ、放課後は五十嵐くんと一緒に過ごせるんだ。嬉しいなあ。




放課後。私と五十嵐くんが揃って教室に残っていたら、他のクラスメイトたちはあっという間にいなくなっていた。

こんなに早くみんな帰ることある?ってくらい。たぶん終業からまだ20分も経ってないと思うんだけど……。


「…………」


取り残された私たちの間に沈黙が落ちる。


「み、みんな帰るの早いね……」

「俺がいるからだろ」


もう慣れた、と五十嵐くんは諦めた顔をして言った。垂れ幕の件で彼が教室に残った時も、みんな早々に帰っちゃったって言ってたもんな。


その頃はたぶん、ほんとに五十嵐くんが怖かったんだろうけど……。垂れ幕の一件は同時に五十嵐くんのイメージアップにもつながった。

だから、今のクラスに五十嵐くんを本気で怖いって思う人はいないと思う。