ハルとオオカミ



「なあ」

「うん?」

「今日の放課後ヒマ?」


驚いてうしろを向くと、五十嵐くんは教科書を見ていた視線だけを上にして、上目遣いにこちらを見ていた。


その表情にさらに心臓が高鳴る。

こ、こ、このときの私の心境を皆さんにも想像してみてほしい。推しに『今日の放課後ヒマ?』と上目遣いで尋ねられたファンの心情を140字以内で答えよ。


「……せ、せんせいから頼まれたお仕事があって……きょうしつに、のこる、よていです」

「あー、そっか。それ、けっこう大変なやつ?」

「ううん……のろのろやってても一時間で終わるくらい」

「そ……。あのさ。今日の放課後、教室に残って課題やんなきゃいけないんだけど、はる、付き合ってくんない?」


『付き合ってくんない?』が脳内でこだました。同時に思考回路が宇宙空間に飛ばされる。私の頭の中で地球が三回くらい公転した。