「なーんか、せっかく友達になったのに、結局はるにとっては『アイドル』なんだね」
「友達でありアイドルなの。最高の関係だよ」
「いっそ好きになっちゃえばいいのに。絶対上手くいくと思うけどなあ、あんたら」
「それは……絶対、ナイよ」
上手くなんか行きっこない。
今、私と五十嵐くんが仲良くできてるのは、そういう男女のあれこれが絡んでないからだと思う。
私は穏やかな気持ちで一緒に居れるし、五十嵐くんも私のことを学校で数少ない気楽に話しかけられる相手として思ってくれてるだろう。
それでいいんだ。それがお互いにいちばん幸せなかたちだろうから。
「友達にはなれたけど……好きには、ならないよ。今の関係、壊したくないから」
机の上に顎を置いて唇を尖らす。目の前のペットボトルに歪んだ私の顔がわずかに映り込んだ。
そんな私を見て、アキちゃんが小さく笑った。
呆れたような、馬鹿だなあって声で。
「……好きにならないように頑張ってる時点で、もう手遅れだと思うけどね」
見開いた私の目がペットボトルに映ったとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。



