うう、仕方ない。本人いないけど誤解だけは解かなきゃ。


ぎゅっと手のひらを握りしめると、前を見据えた。


「昨日の、旗のことなんだけど。鈴菜ちゃんからみんなに言いたいことがあるので、聞いてください」


横で、鈴菜ちゃんがごくんと唾を飲み込む音が聞こえた。


彼女はすうっと深呼吸をすると、「あの」といつもより大きな声で話し始めた。


「昨日、旗の上に絵の具かけちゃったの……私です! 言い出せなくて本当にごめんなさい!!」


鈴菜ちゃんががばっと勢いよく頭を下げる。クラスメイト達から「ええっ」と驚きの声が聞こえてきた。


「マジで? 五十嵐くんじゃないってこと?」

「じゃあなんであいつ、『俺がやった』とか言ったんだよ」

「おい五十嵐……ってあいつもういねーし。帰んのはえーな」


ひそひそと話し声が聞こえてくる。


鈴菜ちゃんは今にも泣きだしてしまいそうな顔で肩を震わせながら、それでも強い瞳でみんなの反応を見ていた。