「五十嵐くんが嘘をついたのは、あの場を早く終わらせたかったから?」

「……まあ、そんなとこ。その女子が自分だって言い出さない限りは、不毛な話が続くだけだろ。めんどくせえ」

「……こうやって旗塗りなおす方が面倒じゃない?」

「…………」


五十嵐くんがまた顔をあげて、不満そうに私を見る。


その顔が可愛くて、思わず笑ってしまった。


笑った私を見て、彼は拍子抜けしたような顔をしてから、罰が悪そうに下を向いた。


「五十嵐くん、テスト勉強は?」

「……最近は前の席の人のおかげで、授業がなんとなくわかるようになってきたからたぶん大丈夫」


言われて、ちょっと嬉しくなった。役に立ててるみたいだ。


最近の五十嵐くんは授業中もあまり寝てないみたいだし、いいことです。


思わず鼻歌を歌ってしまいそうなほど機嫌よく色を塗っていると、五十嵐くんがふいに「けど」と言った。