「お疲れ。みんな帰るの早いね」

「……俺が教室に残ってたら、みんなすぐ帰ってった」

「……そ、そか」


話題の選択をミスった。コミュ力なくてごめんなさい。


「……あの、これ……よかったら飲んで」


さっき買ってきたアイスココアを差し出すと、五十嵐くんは驚いた顔で私を見た。


「え、俺に?」

「うん。……ココア嫌い?」


答えはわかっていて尋ねた。


五十嵐くん、冬はよくココアを飲んでたから。


彼のファンである私からすると、彼が甘党であることは全世界が認識すべき常識である。


「いや、好きだけど……もらっていいの」

「うん」

「……ありがと」


五十嵐くんはココアを受け取ると、持ってた筆を置いて缶のプルタブを開けた。


私も彼の向かいに座りなおして、自分の分のココアの缶を開ける。


私が手渡したココアを飲む五十嵐くんを見ていると、ちょっと幸せな気持ちになった。


自分の推しに差し入れしてそれを飲んでくれてるのを目の前で見れるって幸福すぎる。いつもよりココアが甘く感じた。