ハルとオオカミ



そう心の中で繰り返しながら、五十嵐くんの課題に付き合った。


彼は授業中寝てるからわからない部分が多いのだろうけど、教えたら理解するのは早かった。もともと頭が良いのだろう。


「こんな時間まで付き合わせてごめん」


午後七時前。山積みになってた課題も半分以上終わったので、切りのいいところで帰ることになった。


一緒に教室を出て、廊下を歩く。外はすっかり真っ暗だ。


「ううん、役に立ててよかった」

「範囲のとこはだいたいわかったし……あとはたぶん、自分でできると思う」

「今後は課題溜めちゃダメだよ」

「んー」


適当な返事。薄い唇を尖らせて、気だるそうに背中を丸めて歩くその姿を見つめる。


五十嵐くんと、ふたりきりで歩いてる。一時間以上経ってもまだ非現実的だ。夢でも見てるみたい。