ハルとオオカミ



すっかり教室は茜色に染まっている。夕日の橙が彼の赤い髪に重なって、より色鮮やかにしていた。


触り心地の良さそうなふわふわの猫っ毛。西日に当たって鈍く光るシルバーのピアスが、赤髪によく映える。白い肌と、伏せられた瞳を縁取る長いまつ毛。



五十嵐くんは、本当に綺麗だ。



彼の綺麗さは、人形や宝石みたいな人工的なものじゃない。


彼の瞳は迷いがなくて、いつも堂々としている。儚いというよりは力強い。気高く、野性的な美しさ。


五十嵐くんは一年の頃から、この容姿によって周りの生徒や教師からいい目を向けられていない。だけど、ずっとこの姿で学校に通っている。


根っから真面目な生徒が多いうちの高校では、校則がゆるいと言っても彼のように髪を染めようとする人はいない。ハッキリ言って、五十嵐くんはこの高校で浮いている。