「うわあ、大変だね……」
「しかも期限三日後とか言いやがんの。やばくね? 一か月分の課題、んな早く終わるかっつの」
一か月分の課題をやらず過ごしてきた五十嵐くんもなかなかだと思いますが……。
半分くらいやってあげたい気持ちに駆られるけど、私がやったら五十嵐くんのためにならない。ここは我慢だ。
苦笑いしながら「がんばって」と言って、のろのろと帰る準備を始める。
会話が止んで、彼の動かすシャーペンの音と私のカバンに荷物を詰める音だけが教室に響いていた。
けれど途中で、ピタリとシャーペンの音が止んだ。それから一分ほど経っても、音は止んだまま。
私の帰り支度が済んだあたりで、うしろから「なあ」という声が聞こえてきた。
「河名さん、これわかる?」
ドキッと心臓が跳ねた。きゅう、とお腹の奥がなぜだか痛む。私はおずおずと振り返った。



