ハルとオオカミ



夕日が差す窓の外をぼんやり眺めながら、廊下をとぼとぼと歩く。グラウンドからは運動部の元気のいい声が聞こえてくる。


すっかり人の気配の無くなった廊下は静かだ。特別教室棟の方から聞こえてくる吹奏楽部の演奏の音が、なんだかちょっと心を寂しくさせる。


私は今日一日を振り返って、ため息をついた。


席替えしてからの授業は、全然集中できなかった。私、委員長なのに。勉強面では常にトップでいたいのに。


優等生『キャラ』とはいいつつ、私は真面目な自分が結構好きだったりする。


勉強は好きだ。自分の知らないことを知ることができるから。まだまだ知らないことが世界にはたくさんあるんだって知って、ワクワクするから。


それなのに、こんなんじゃだめだよね。授業に集中できないのを五十嵐くんのせいにはしたくないし、もちろん席替えのせいでもない。自分のせいだ。


『これを機に今より仲良くなれるかもだし』


アキちゃんの言葉がよみがえる。


五十嵐くんと今より仲良くなったとして、困るのはクラスメイトに私の気持ちがバレることより、今の自分のままじゃいられなくなることかもしれない。