ハルとオオカミ




お題は一体何だったんだろう……?


実況の生徒が五十嵐くんのそばへ来て、「“借りてきたものを教えてください”」と質問した。


五十嵐くんは反対側の手で握っていた小さな正方形の紙を見ながら、言った。




「“……『学校一カッコいい人』、です”」




……『カッコいい人』……?

私や実況の人、生徒たちは一瞬ポカンとした空気に包まれた。

ただひとり、五十嵐くんだけが毅然とした態度でグラウンドの中心に立っている。


恐らくこのお題は、女子が引き当てることを想定して設定されたものだろう。なのに引いたのは男子生徒で、しかも連れてこられたのは女子生徒で。

予想していた答えと違って戸惑っているのか、実況の生徒は「“えーと……”」と言葉をつまらせた。



「“り、理由を教えてもらえますか?”」



五十嵐くんは、ちらりと私の方を見た。ただ彼を見つめ返すばかりの私を見て、彼はフッと優しく笑う。


その顔に私がドギマギしているうちに、五十嵐くんはマイクに向き直って静かに話し始めた。