顔をあげると、私よりずっと高い位置に眩しい日の光を浴びた赤いうしろ頭が見えた。耳にかけられた髪を留める黒いアメピンがきらりと光る。
体操服の白が太陽を反射して、一層私の目に色濃く映った。
私たちを囲む空間は色んな声が飛び交っていてうるさいはずなのに、この瞬間ばかりはどんな音も私の耳には届かない。
ただただ目の前の背中が大きく、眩しかった。
「“第三走者、またもや女子生徒を連れて一位がゴールしましたー!”」
五十嵐くんとゴールテープを切った瞬間、ようやく周りの音が聞こえてきた。
どうやら他の走者は目的のものを借りてくるのに時間がかかっているらしく、いちばん最後に紙を引いて一直線に私を連れてゴールした五十嵐くんが、結果的にいちばん速かったようだ。
大して走ってもいないのに、どっきんどっきんと心臓が激しく脈打つ。
私の手を握る五十嵐くんの横顔は、いつもと全然変わらないクールな表情だった。



