ハルとオオカミ



仕事ができて、成績も優秀で、人に優しくできる。みんなに頼られるこの地位は、私が目指す『格好いいひと』を体現してくれた。


弱い私を支え、強くし、胸を張って生きるための虚像。


『確かに。いつもカッコいいよ、お前は』


それを格好いい私の姿として認めてくれたのは、他でもない五十嵐くんだったね。


「……うん」


小さく返事をした。私の頬を包む彼の手の平に、一粒だけ涙がこぼれる。


彼はそれを笑って拭うと、私の手をつかんで教室の方へ歩き始めた。それに安心すると同時に、何故だかとても切なくなる。


この手が離れてしまうのが、すごく怖い。



「……また私のために友達やめるとか、言わないでね」



広い背中に向かってそう言うと、彼は前を向いたまま「言わねーよ」と言った。