ハルとオオカミ



「……ああ、確かにそれは悪かったな。ただ河名さんには言った通り、君の素行を問題視する目があることを忘れるな。こうやって傷つくのは、近くにいる河名さんのような真面目な生徒だということも」

「……ご忠告、痛み入ります。先輩」

「…………」


変わらない五十嵐くんの態度に気を悪くしたのか、先輩はそれ以上何も言わず不快そうに眉を寄せて去っていった。


ゆるく私の口を塞いでいた手が離れる。彼はそのまま「ごめん」と静かに言った。



「巻き込んで、傷つけてごめん」



その声には元気がない。彼が自分を責めているんじゃないかと不安になった。


「五十嵐くんは、何も悪いことしてないよ。だから謝らないで」

「……うん。けど、俺は結構前から直接色々言われてたんだよ。教室でお前があいつに呼ばれたって聞いてすぐに来たけど……もっと早く気づいてたらよかった」

「……それは……」

「お前のこと、優秀な後輩だって言ってた。なのに俺のせいで悪い印象ついて……ごめん」


私はたまらず振り返って、彼を見た。

その目は少し前、『こんな問題児に構ってくんなくていいよ』と自嘲したように言っていた、あのときと同じ目で。