私はいっぱいの文句を抱えた口を大きく開こうとした。
だけどそれは、寸前に私の口を覆った大きな手の存在に遮られた。……あ。このにおい。
「文句があるなら俺んとこに直接来てくださいって前に言いましたよね、先輩」
五十嵐くんだ。
私のうしろに五十嵐くんがいる。どうして……。
先輩は突然現れた五十嵐くんに驚いた様子も見せず、冷たい目を向けた。
「……いくら君に直接注意しても意味がなさそうだと判断したんでな。ただ、河名さんはもう君の毒牙にかかっていたが」
「はるは純粋潔癖なんで俺の影響とか受けませんよ。俺に勉強教えながら、この前の中間も一位だったし。俺を蔑むついでにはるを巻き込むのやめてもらえますか」
五十嵐くんの口調は軽かったけど、ところどころの言葉に怒りを孕んでいるのが声でわかった。
そんな五十嵐くんを前にして、先輩の態度は変わらず冷ややかだ。



