ハルとオオカミ



「『正す』って、なんですか? 染髪もピアスも、校則違反じゃないでしょう」

「いくら校則が緩いといっても、生徒自身が節度を持って自らを律するべきだろう。正直、彼のような人間が我が校の制服を着て街を歩いているということ自体が許しがたい」

「こ、校則を違反してるわけじゃないのに悪いことしてるみたいに言わないでください! 彼だって節度を持って学校に来て授業を受けています」



必死に言い返すと、先輩は私をじっと見下ろした。そして、ひとつため息をつく。……え?



「……君はすでに『影響を受けている側』だったか。彼は女遊びが激しいという話も聞くが……もうそういう関係なのか?」



何を言われても言い返す自信があった心が、急激に萎えていった。


……『影響』? 『そういう関係』? この人は何を言ってるの?


「君には期待してたんだが。少々他人に甘いところはあるが、成績も優秀だし素行も模範的だ。有望な人材だと思っていたんだが、残念だな」

「…………」

「実は生徒会や一部の教師、保護者からも彼の影響を心配する声が出ている。君がダメなら、風紀委員の僕から直接彼を指導しよう。時間をとらせてすまなかったな。河名さん」


先輩はそう言って立ち去ろうとする。


私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。

言いたいことが山のように積みあがっていくのに、怒りと悲しみともどかしさで喉の奥がつまって声が出ない。