ハルとオオカミ



風紀委員長の坂上先輩。彼は去年クラス委員をしていて、会議の際によく話す先輩のひとりだった。


真面目な生徒が多いうちの学校の中でも、随一の真面目さを持つ。

自分に厳しく他人に厳しく、仕事はきっちりしっかりやるタイプ。ちなみに私と同じ、入学時から学年一位をひた走ってきた人だ。



「……河名さん。少し話があるんだが、いいか?」



坂上先輩はなぜかちらりと教室の方に目を向けて言った。

話……?


「はい、いいですけど……」


なんだろう? 違う委員になってからは話すことも減ったし、話題が特に思いつかない。


先輩は私を連れて廊下の突き当り、奥の階段前の人が少ない場所に来た。


私に向き直った先輩は、気難しい表情のまま口を開いた。



「……君のクラスに、五十嵐真央という男子生徒がいるだろう」



い、五十嵐くん?


思ってもみなかった話題に困惑した。「いますけど……」と答えると、先輩は「彼のことなんだが」と言った。