ハルとオオカミ



うーんと複雑な気持ちになっていると、件の男がテントに戻ってきた。


「あー。疲れた」


五十嵐くんがどかりと席に座る。私は苦笑いしながら彼に声をかけた。


「お疲れ様。一位だったね」

「んー」

「嬉しくない?」

「別に……フツ―に走ったら一位だっただけ」

「……スカしちゃって」

「あー?」


小声で言ったら聞こえてた。聞こえるように言ったけど。



「うそうそ。カッコよかったよ、五十嵐くん」



にこにこして言うと、五十嵐くんはちょっと拍子抜けした顔をして、それから照れたように「はいはい」と唇を尖らせて言った。その顔が可愛すぎて、私の目がカメラのレンズだったら尊さに割れていたなと思った。


「あ、そーだ。カメラ貸してよ。はるが頑張ってパン食うの撮ってやるから」

「ええっ?」


五十嵐くんが、私を!?



「撮らなくていいよ! ていうか見なくていいよ私なんか!」

「他人ばっか撮ってても仕方ないだろ。カメラ、こん中?」


五十嵐くんはなぜか私の手提げ鞄にカメラが入っているのを知っていた。止める間もなく彼の手が鞄の中に入り、再び見えた時には手にカメラを持っていた。