「うわ。五十嵐一位じゃん」
横でアキちゃんがつぶやいた瞬間、五十嵐くんがゴールテープを切った。私の近くで応援していたクラスメイトの女子たちがにわかに沸き起こる。
記録係の人が五十嵐くんに話しかけた。
その間、五十嵐くんは額の汗をシャツの襟もとで拭ったりと罪深いことをやってくれていたのでもちろんカメラは回し続けた。
「…………」
「……おーい、はる? 大丈夫?」
苦笑いしたアキちゃんが、私の顔の前で手を振る。
彼が待機列に戻っていくまで、私は放心状態だった。
あまりに自分の好きな人が格好良すぎて。グラウンドを駆ける推しの姿が尊すぎて。
「うちのクラスの男子、頑張ってたよね~」
「ね~。てかけっこう五十嵐がカッコよくなかった?」
「それ思った~! 普通にイケメンだし足速いし。他の男子と違ってなんか大人っぽいしね~」
男子百メートルが終わって彼らが退場していくとき、聞こえてきたクラスの女子たちの会話にハッとした。
な……なんだと……?
何十人もいる二年男子の中で、五十嵐くんに目をつけるなんて……お目が高い!



