ハルとオオカミ



そんな彼女とともに五十嵐くんが走る順番を待った。

五十嵐くんが次の走者になってコースに立ったとき、あまりの興奮に録画しているカメラを持つ手が震えた。


彼の赤い髪は本当にすっごく目立つ。

茶髪に染める人は男女ともたまにいるけど、彼ほど目を引く髪色の人はいない。


ああ、やっぱり今日の髪型、最高だ。耳がしっかり出て綺麗なこめかみがちらりと見える。体育祭仕様なのかな。とにかくありがとうしか言葉が出てこない。


私の目は完全に五十嵐くんに焦点を当ててしまっていて、横に並ぶ走者とか彼の周りの景色とか、五十嵐くん以外のすべてがぼやけて映る。


五十嵐くんは気だるそうにうーんと伸びをしてから、係の合図で位置に着いた。


やがてパアン、とピストルが鳴ってスタート。

五十嵐くんはさして力を入れていないように見える走りだったけど、ぐんぐん他と差をつけていく。私はそのたった十数秒を固唾を飲んで見つめた。