開会式が終わると、競技が始まった。
全校生徒はみんな百メートル走に出場することだけ共通していて、あとは一つ以上の別の種目に参加することになっている。だからやる気がある人は四つか五つくらい種目に出たりして忙しい。
私はというと、体育祭への熱意はあるけどそれは競技に対してというより五十嵐くんを観察することに向けられているので、参加するのはパン食い競走だけだ。
アキちゃんは知っての通りお祭り大好きで運動神経もいいから、三つほど種目に出ると言っていた。
そして肝心要の五十嵐くんは、当然面倒くさがりなので一つ以上は参加しない。
五十嵐ファンとしてはグラウンドを駆けまわる五十嵐くんが見たいので非常に残念なんだけど、参加する種目を聞いて飛び上がった。うちの体育祭名物のおふざけ種目、借り物競走だったのだ。
五十嵐くんはクラス内で誰がどの競技に出るかを決める話し合いには参加していたけど、『なんでもいい』と言ってしまったために借り物競走の生贄になってしまった。
『なんでもいい』という言葉は便利だけど、場合によっては非常にリスキーなのである。



