ハルとオオカミ



……『はるが怒るから』、か。


現に怒ってたけどね、私。可愛さあまって憎さ百倍だったのに、今は一億倍の可愛さしか残ってないけどね。


……嬉しい。五十嵐くんが、私の言葉で来てくれた。

去年だったらこんなこと起こらなかった。『体育祭来るよね?』と念押しすることもできなかっただろう。


ああ、仲良くなれてるんだなあ。私たち。

一歩踏み出して、仲良くなってよかったなあ。


最高な体育祭のはじまりに嬉しくなる。五十嵐くんが戻ってくるまで表情が緩みっぱなしになってしまって、ちょっと困った。








グラウンドに出て少しすると、開会式が始まった。


全校生徒がクラスごとに整列して先生たちの話を聞いている間、私は目の前の校舎のベランダから吊り下げられている垂れ幕たちに目を奪われていた。

一学年に四クラスあるから、計十二枚の垂れ幕が並んでいる様はけっこう壮観だ。