ハルとオオカミ




「おーい、河名さーん? 生きてんの? 大丈夫?」



固まっている私に近づいてきて、あろうことか顔を覗き込んできた。ぎゃあああ。横髪を耳にかけてるのめちゃくちゃカッコいい。ずるい。もみあげがセクシー。死にそう。


「い、い、い、五十嵐くん」

「ん?」

「ちっ、遅刻だよ! 来るの遅いよ!」

「寝坊したんだよ。めんどくせーから行くのやめようかと思ったけど、行かなかったらはるが怒るから来た。褒めて」

「そ、それはえらい……えらいです……」


今度は五十嵐くんを褒める機械と化した。えらすぎて拍手喝采、満員御礼のスタンディングオベーションです。


胸キュンすぎて再び目の前の唯一神に見惚れていると、五十嵐くんはふはっと気の抜けた笑顔を私に向けて、「教室に荷物置いてくる」と言って教室へ歩いて行った。


私は階段の途中で立ち止まったまま、ドキドキとキュンキュンで痛む胸を押さえた。