ハルとオオカミ



ず、ず、と鼻をすすりながら鞄を開けると、一週間ほど前にもらったりんごジュースを取り出した。


「……え。それ、もしかして俺があげたやつ?」

「うん」

「まだ飲めんの……?」

「大丈夫。まだ蓋開けてないし、賞味期限も先」

「飲みたくなかったら無理に飲まなくていーよ」

「違うの。大事にとってたの」

「……俺があげたから?」

「うん」


なんだそれ、と五十嵐くんは苦笑いを浮かべた。


憧れの推しからもらったプレゼント。そう簡単に口にできるものじゃない。


涙に濡れた目元と頬を拭って、ペットボトルを開けた。きらきらしたりんごジュースは甘酸っぱい味がした。


「ホント変わってんな、はる。俺には簡単に近づいてくるくせに、男の半裸なんかでいちいち騒いでさ……よくわかんねえ」

「……五十嵐くんとは仲良くなりたかったからこうして話してるだけだし、半裸にびっくりしたのは単に慣れてないだけで……」


嘘は言ってない。半裸に恥じたというより、自分の止めどない興奮が抑えられなくて焦ったという方が大きいけど。