ハルとオオカミ



「……………」


ふいに五十嵐くんの影が動いて、彼の足が一歩、私へと近づいた。おもむろに彼の白くて骨ばった手が伸びてきて、綺麗な指が私の顎に添えられる。


そのまま上を向かされて、彼の顔を見た。

彼は目を細めて笑っていた。目が合うと、ふっと噴き出して肩を震わせて笑った。


「あははは……はる、こんなんになりたいの?」

「こ、こんなんて何? 五十嵐くんは尊敬できる立派なひとです!」

「自分で言うのアレだけどさあ、友達いない問題児じゃん」

「私が委員長である限り五十嵐くんを問題児にはさせません! 友達なら私がなるから!」

「うん。もう俺ら友達だよ、はる」


……あ。


五十嵐くんが笑うのをやめて私を見た。


彼は「人の話は最後まで聞けよ」と言って、私の頭を雑に撫でた。


「はるはたぶん、俺といない方がいいと思う。けど俺ははるといんの楽しいから、できればこのままがいいって言おうとしたんだよ。遮りやがって」

「……ほんとに?」

「ほんとほんと。てか、『憧れてる』って……。はるは俺の心配とか色々、想定外の高さで乗り越えていくよな。マジで飽きねえわ」



五十嵐くんはまた面白そうに笑っているけど、私は驚きと感激で呆けていた。