ハルとオオカミ



……馬鹿だな、私。



違うのに。嫌なんかじゃないのに。


髪、褒めてくれた。大した手入れをしているわけじゃないけど、見苦しく見えない程度にはケアをして整えている。


私が憧れているひとの髪は、とっても綺麗だから。

少しでも近づけるように。私らしい髪のまま、彼のように自信を持ちたくて。



「……私、なにやってんだ……」



情けなくて涙が出た。そんな自分もまた嫌で、必死に涙をこらえた。



自分でこの家に来たくせに。

あの女の子たちと『はるは違う』って言われて悔しくて。

私も、学校外の彼の領域に入ってみたくなって。


友達でいるのが一番いいなんて言っておいて、これだもん。馬鹿みたい。


今の関係なら、ずっと幸せな気持ちのまんま彼の隣にいられるって、そう必死に思い込もうとしていた。


そんなのもう、無理なのに。


ずっと幸せな気持ちのまま彼の友達でいるってことは、彼のことを何も知らないままでいるってことだ。

中学時代の友達も、彼を『真央』と呼ぶ女の子のことも。


目をそらして知らないふりして、私の目に映る私の都合のいい五十嵐くんだけを見つめて。何も知らないくせに『友達』なんて、薄っぺらくて笑ってしまう。