ハルとオオカミ



「……ん?」


それを拭って空を見上げると、頭上を灰色の雲が覆っていた。雨雲だ、と思うと同時に、一気に大粒の雨が降ってきた。


「わあ、雨!? 晴れの予報だったのに!」


傘持ってきてないよ!

周りを歩いている人々も、突然の雨に慌てて建物の中に入っていく。


「うぜー……。はる、とりあえず近くで雨宿りしよ」


眉根を寄せた五十嵐くんは、私の手をとると走り出した。そのまま、シャッターが閉まった店の屋根の下に入る。


五十嵐くんはハア、とひとつため息をついた。雨はすごい音を立てて地面を叩いている。


「いきなりだったな……」

「だ、だね。通り雨かな……。びしょ濡れになっちゃったね」


身体は雨に濡れてすっかり冷えたけど、未だにつないだままの手がやけに熱く感じた。