ハルとオオカミ



「なんだよその反応……。いい加減サボんのやめねえとマジで留年するって担任に言われてんの」

「えー、つまんな~い。だから日向ヶ丘なんか行かない方がいいって言ったのに。マジメな真央とか真央じゃないよ」

「はあ?」

「……ねえ、次いつ来る? 真央がいないとつまんないってみんな言ってるんだよ」

「……気が向いたら行くって言ってんだろ」


うつむきがちに黙ってふたりの会話を聞いていると、五十嵐くんが「悪いけど」と言って会話を中断した。



「俺ら、このあと用あるから。行こ。はる」



五十嵐くんはナナミちゃんの手を振りほどいて、私の手をつかんだ。驚く私に構うことなく、五十嵐くんはその場からさっさと離れようとする。



「……あんたじゃ真央は無理だよ」



去り際、呟きのような声が聞こえて振り返った。

ナナミちゃんと目が合う。彼女はムッとした顔で私を睨んでいた。







人ごみから出て本屋の前まで歩いてくるまで、なんとなくお互い無言だった。


本屋に入って私が新刊コーナーを見ている間も五十嵐くんは私の近くにいたから、ずっと会話がないのも変な感じがして、「あの」と口を開いた。