「不倫相手と別れるはめになったから、うちの事務所に殴り込みですか?」
ストレートに聞いてみる私。
『殴り込み』って言葉に、畑山さんは小さく声を上げて自分のデスクの下に隠れてしまった。
素晴らしきへタレ。
「どう思う?」
ぷかーって吐いた煙草の煙が私の顔を直撃。
健康の為に煙草はよくないよ。
ゲホゲホしながら考える私。
不倫のわりに
商売の邪魔とか客を奪ったとか言ってたから
ただの不倫じゃないんだろう。
うーんと唸っていたら
畑山さんが机の下から上昇し「彼との不倫はお仕事だったのでしょう。もしくは不倫じゃなくて他の内容とか」と、蚊の鳴くような声を出した。
ビジネス不倫?
「そーよ。だから怒ってるの」
喪服の女はまだ残っている煙草を惜しげもなくつぶし、また畑山さんの元へ勢いよく向かって、机の下に戻ろうとするへタレの腕をつかむ。
「だから暴力反対!」
「ケガさせないから安心しな」
私に言いながら、鋭い目線は畑山さん一直線。
「おっしゃるとーりのビジネスよ。私はあの男と5の付く日にホテルに行ってお勉強会をしていた。すんごい金額もらってね。あと1ヶ月は仕事できたのに、それをアンタ達が邪魔をした」
「奥さんに会って報告書を提出した時、何となく雰囲気でわかりました。あなたは彼を色んな意味でセラピーをしていたんじゃないですか?」
「セラピー?お上品な言い方で気に入ったわ」
ふたりの目がキラキラしている。
なんか盛り上がってる?
でも意味がわからないんですけど。



