「瀬田ぁ〜っ!」


と高い声が背後から聞こえた。
僕の名だ。

僕を呼ぶ人なんて存在しただろうか、疑問に思いつつ振り返る。

ドンッ

前から歩いてきた女子に当たった。
ふわっ、と香る香水。

「ちっ」

投げ捨てるように舌打ちして去って行った。


「瀬田ぁ、遅いよ!」

「ごっめーんっ、てか誰かに当たったんだけど〜ぉ。」


先ほど当たった女子が、瀬田という者のようだ。
なんだ、僕じゃないのか。分かっていたが、それよりも…

舌打ちとは何なんだ。
無性に腹が立った。