私は、どこに行ったらいいんだろう。
そう悩んでいる時、
背後から、ガチャり、とドアが開く音が。
あのおじさんだった。
ニヤニヤしていて、気持ち悪い。
「おや?南も座りなさい。」
と、急かされてとりあいず白檀高の人の隣の席に座った。
「
さて、じゃあもう一度話すよ。
君たちは、一ヶ月住んでもらう。
ちなみに、お金はぜーんぶ僕が払うから安心して過ごせばいい。
お金はいくらでも持ってるから、そうだな〜食料代は20万くらいでいいか?
また、送り届けるよ。
私物が買いたいだろうし、君たちに一人ずつ10万円渡すから、自由に使いなさい。
それも、また送り届けるよ。
それ以外に、足りないことがあったらいつでもいうんだぞ。毎週日曜日に僕は来るからね。
あぁ、そうそう。
帰ってもらうのは自由だけど、君たちの母親が家に入れてもらえないよー。
試したらいいけど、追い出されるだけだからやめとくこと。
部屋は、自分たちで分担して使いなさい。
しかし、部屋と言っても一人ひとつずつ。
最後に、家族として過ごしなさい。
さて、以上をふまえて質問はあるか?
」
ざっと説明されたが…やっぱり実感がわかなかった。
でも、質問をしたいことは山ほど。
「どうして急にこんなことを?」
とりあいず、聞きたくて聞いてみる。
「まあ、そのうちわかるさ。」
また、にやりと笑うおじさん。
なにそれ…
テキトーだなぁ。
「てかさあ、ここから学校通うの…大変なんだけど〜」
ギャルがダルそうに言った。
確かにそうだ…大変そう。
まず、場所がわからないし。
「あーそうだな。
なら、毎日送迎の車を出そう。しかし、一台だけだ。みんな考えて使うように。」
1台って…これは、いいのかな?い、いいのか。
「あんまり気にならないけど、僕の父親なんだよな。」
白檀高の人が本を見ながら聞く。
「あぁ、そうだよ。
君たちの父親。」
あ、そうだった。
この人…お父さん。
でも案外、
知らなくてよかった、という感情だけだった。
前から、欲しいと思ったことは不思議と少なく、シングルマザーということも特に考えていなかった。
だから、父親なんて正直、どうでもいい。
「さー、じゃあ時間だから僕は帰るよ。
またね。」
おじさんが、出て行ったあと再び沈黙が。


