また、暑い季節を迎えていた。
父がいなくなって2年が過ぎていた。
私はこの頃には父のことを
思い出すことも少なくなっていた。
正しくは彼のことしか
頭になかった。
私は彼に夢中になっていた。

幼い私は、自分の恋に恋していた。
だから大切な人が身も心も
すり減らしながら苦しんでることに
気付かなかった。

ある日、この日も私は
彼と一緒に学校へと向かっていた。
一緒に登校することにも
慣れてきて、普通に話すことも
できるようになった。
それに慣れてしまえば、もっと
欲張りになっていく自分がいた。

付き合いたいとか手をつなぎたい
そんなことを考えるようになった。

今、思えば彼もまたそんな風に
考えていたのかもしれない。

学校へと向かう途中に彼が言った。
「今日さぁ、夏祭りあるだろ?
 高科はだれかと約束ある?」
そう言われてにぶい私でも
誘ってくれてることがわかった。