「由緒正しいお家の長男って大変ですね」


庶民でも長男は家の跡継ぎって言われて結婚急かされるしな。うちの田舎とかまさにそう。で、長男嫁はもっと大変。


「そや!まどか、お前こいつの嫁になれ」


おっさんがいいこと思いついたとばかりに起き上がってアホなことを言った。


「いや、無理ですよ。お金持ちの旧家の長男嫁とか面倒くさそうですもん」

「即答かよ」

「現実みてますんで私。さ、浄化しますよー」


苦笑いする社長の手を取って深呼吸。
蛍光ピンクにラメも交じっている黒い靄。あー 社長のことがギラ付く感じに好きなんだろうなあ。
真っ直ぐとは言えない、澱んだ色。その黒ピンクの靄がずずっと私の体に入ってきた。

うわ、重ッ。濃い~。む、胸やけしそう…。


「こ、これ強烈ですね…」

しかもしぶとい。吸われているのに一部がびよーんと伸びて社長にとり憑こうとしている。しかも下半身に向かってとか変態なだけある。
さすがストーカーというべきか。き、きつ…。

嫌がるような黒い靄を根性で吸い込むと、ぐわんぐわんと体の中心が揺らされてるみたいになった。う。気持ち悪い。
我慢できず、社長の手を握ったまま、ソファに倒れこんだ。
頭が社長に膝枕状態になっちゃったけど、ごめんなさい許してください。


「大丈夫か!?」


反対に浄化された社長と防御係をしていたおっさんは楽になったようだ。
よかった。


「はい大丈夫…とは言えないですけど、なんとか」

「悪いな、こんなことさせて」

「大丈夫です。すぐに回復しますよ」


膝の上に乗った私の頭を社長の手がそっと撫でてくれる。…気持ちいい。


「今日は焼肉かステーキでも食べに行こう。デザートのケーキも好きなだけ食べていいよ」

「う…今、胸やけしてるんで食べ物の話は後からお願いします…」


ここまで強烈なのは初めてだ。2人分だからかな。変態でストーカーだしな。
食べすぎみたいに胸はつかえるけど、でも体の力は抜け足に力が入らない。

やばい…今は就業中。早くオフィスに戻らないと変に怪しまれる。

よいしょと頭を上げて立ち上がろうとするけど、回復が追いつかずふら付いてしまった。

「無理するな」

社長と入れ替わりにソファに寝かせてもらった。このまま1時間くらい寝ていればましになるんだけどなあ。
立てるようになったら医務室にでも行って少し休んで来ようかと考えていると。