─彼女の口元に運ばれていくそれに、思わず顔をしかめる。僕は煙草の煙が苦手だった。
「ああ、君は煙草が嫌いだったね。一本吸う?」
「生憎未成年なもので。」
ひどくおいしそうに吸う姿が、少し憎らしい。
よれたメイクにスーツを着たままあぐらをかく姿は女性らしいなんて到底思えないのに、なぜかとても惹かれてしまう。
僕がわざとらしくコーラの缶を煽ると、彼女は目を細めた。
「真面目だねえ。」
笑う彼女は、2本目に火を付けだす。
煙はたちまち部屋に充満し、僕はむせたくなったけど、意地で我慢した。
「わざとですか。」
「さあ。」
いたずらっぽく笑うと、不意に彼女は目を伏せた。まるでなにかを憂いているように。
…そんな顔を見せられたら、からかわれていることに対するいらだちは募るのに、なにも言えなくなる。
僕はゆっくり彼女に近づき、慎重に隣に座ってみた。彼女がなにも言わないから、そちらに顔を向けたのだが。