「自分から、心を開けばいいんだよ。…わたしのときみたいにさ。」
「…ああ、そうだな。」
俺は、苦笑いをして見せた。
これは降参の意だ。
こんな風に抗ってみても、美晴に勝てたことなんて一度もなかった。
もう俺も、認めざるを得ない。
一通り言いたいことは話したのか、少しだけ、沈黙が流れた。
そして。
「ねえ、最後にさ、一つだけ、いい?」
初めて聞いた。美晴の感情を隠し切れない声。
「ん。なに?」
ふう、と息を吐いた後。
大きく息を吸って、叫んだ。
「わたしは、風見君のことが、大好きだったよ!」
その瞬間。灰色だった景色が、鮮やかに染まったような、目まぐるしい感情の波が、俺の心を駆け巡った。
初めて見た。美晴の涙。
この手でぬぐいたいけど。
俺の役目は、そうじゃない。
「…俺も、最後に言わせて。」
言いたいことはたくさんあるんだけど、まとまらねえから、これだけ。
「なに?」
いつものように聞いてくれる、あんたが。
「俺も…美晴、先輩のことが、大好きでした。
美晴先輩と出会って、俺は、すげえ幸せでした。」
大きく息を吸った。
さあ、あとは、これだけだ。
「先輩、ご卒業おめでとうございます!!」
俺は手に持つ卒業証書を、両手で渡した。
「ありがとう!」
最後に見せた美晴の笑顔は、鮮やかに、俺の初恋を彩った。
END

