「それ、よこせ。」
「いいよ。」
美晴はあっさりと俺に手渡した。
大事なもんなんじゃねえの、と思うけど、結局そこに俺が含まれないことを意味していると分かったから、俺は奪い取るように受け取った。
中を開くと、案外ぺらぺらな紙が挟まっているだけだった。
こんな紙一枚で、俺は一線を引かれている。
それがどうしようもなく、悔しい。
「これ、破っていい?」
言ってから、ものすごく後悔した。
「いいよ。」
俺の最後のあがきを、美晴は変わらぬ笑顔であっさりと承諾した。
なんて残酷なんだろう。
俺の気持ちをぶつけたところで、美晴が俺の前からいなくなる事実は変わらないのに。
「...ごめん。」
「なんで謝るの。…謝らないといけないのは、わたしのほうだよ。」
「…」
「ほんとはさ、来るつもりなかったんだ。
でも、風見君まってるだろうなーって、思ったから。」
「ああ。待ってた。」
「うん。待っててくれたから、ちゃんとけじめつける勇気が出た。
今からちゃんと、言うから。」
「…」
「ほんとはね、風見君のこと、結構前から知ってたんだ…」