…生徒たちの声が遠く聞こえる。
俺にとって落ち着く場所は、やっぱりここだった。

まだ寒そうにしている枝には、新たな季節を待ちながら眠るつぼみが見える。


「…」

「桜、今年もきれいに咲くといいね。」

「…ああ。」



美晴なら、来ると思っていた。


「風見君が式に来てたって、話題になってたよー」

有名人だね、なんて茶化す美晴を呆れた目で見やる。

「あはは、なんか懐かしいね、この感じ!
式はどうでしたかー?」

「退屈だった。」

「正直だなあ。」

あはは、と笑った美晴は、少し目元が赤かった。

「それ、卒業証書?」

「あ、うん。」

紺地の良さげな布に包まれたそれが、やけに目についた。



…なんか、それが、イラつく。