わたあめ、りんご飴、かき氷、チョコバナナ。
美晴がここまでで食べたものだ。
浴衣をきつくし過ぎてあまり食べられないとか言いながら、甘いものは別腹らしい。
屋台に目移りしている美晴に、まず参拝だろうが、って言ったら似合わないと笑われた。
「楽しいね!」
両手にたくさんの食べ物を抱える美晴は、本当に楽しそうだった。
「ああ。」
俺は、自分の右手が所在なさげに揺れているのを無視して、本題に切り込むことにした。
「…場所、移動しよう。」
「え?あ、うん。」
連れてきたのは、神社の近くにある人気のない小さな公園。
…まだ花火までは時間がある。聞くなら今だ。
「あのさ」
「なに?」
「なにか、あったろ。」
祭りの最中も、警告音は鳴りやまなかった。
それどころか、より大きな音をたて、俺の不安を煽る。
「なんで、そう思うの?」
「笑ってごまかそうとしてる。今も。」
「答えになってないよ。」
あんただって、答えてねえじゃん。
「お前のこと、ずっと見てた。」
「…ほう。」
適当な相槌とともに、美晴は俺に背を向けた。
警告音は、さらに加速していく。
不安は焦りに変わって、俺は美晴の背中に手を伸ばした。
「美晴っ、俺はお前のことが...!」
その先を拒絶したのは、美晴だった。
「わたし、県外の大学に行くことにしたの。」
祭りの終わりを告げる花火が上がり、そして、散った。
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初めて目の前で引かれた一線。
続きます。
H29.3.23