パシン。

衝撃の走った頬に、熱をもつ。


「カズくんを返してよ!」

でもそれに反するように、心はどんどん温度が下がっていく。

それが自分のなかで可笑しくて、あたしは笑みを浮かべる。


「返してもなにも…とってないんだけどなー?」


くらった2発目は、放課後の教室によく響いた。


目に涙を溜めた彼女は一見可憐に見えるかもしれない。
だけどあたしからしてみれば、神経の図太い嫉妬の塊だ。

嫉妬した相手に2発平手打ちなんて、そうとう気が強い。
 

ていうか実際、あたしはなにもしてないし。

「だって、勝手に向こうに惚れられてんだもん、仕方なくない?」

「あんたが誘惑したに決まってる!」

「だとしてもあたしに気持ちが向いたなら、あんたがその程度だってことだよ。
所詮あんたのしてることはただの八つ当たり。
いい迷惑だわーほんと。」


彼女の悔しそうに歪んだ顔が最高に面白い。

そのあと何か言ってた気がするけど、あたしはひたすら爆笑していた。