ほら、成宮も困ってるじゃん。
さっさと、この手を離せばいいのに…
それでもあの子のとこに行って欲しく無くて。
この手をここで離したら、成宮さえも一緒に離れていくみたいで嫌だった。
「…文化祭の仕事。サボったら容赦しないから」
「はいはい。すぐ戻りますよー」
後ろから、ギュッと右手で掴んでいた服をパッと離すと成宮は、いつもの笑みで微笑みながら。
一瞬で人混みへと消えていった。
あんなに走るくらい、きっと。
あの子のことが、それだけで好きなんだろう。
「“はい”は1回でしょ………」
なんて、ツッコミを入れる余裕さえも。
今の私には無かった。



