「俺が無理に連れ戻して辛い思いをするくらいなら何もしないし、御前がそれを望むのなら俺は何も言わない。」
すれ違い際に言葉を並べる水谷に対して心を痛めて香音は更に頭を垂れる。
「…邪魔して悪かったな。
金刺も突然来て迷惑掛けたな、『香音』の事、今後も宜しく頼むよ。」
「水谷さん…!」
瑠華が何かを言おうと引き留めようとしたが、既にその引戸は動いていて虚しくもガラガラと音を立てて閉ざされてしまった。
木製のテーブルに律儀に置かれた釣銭をキッと睨み返し、土方スタイルの女はズカズカと女店主の所へ歩み寄った。
「本当に良いのか、あれで。」
瑠華はふてぶてしく先程男が去って行った引戸の方向に指を指しながら言った。
「…良いんだよ、これで。」
あたかも腫れ物が取れた様な清々しい顔で煙管を手に取り、更かす香音は微笑しながら言う。
只、口角は上がっていても目だけは何処か哀しげなままだった。
すれ違い際に言葉を並べる水谷に対して心を痛めて香音は更に頭を垂れる。
「…邪魔して悪かったな。
金刺も突然来て迷惑掛けたな、『香音』の事、今後も宜しく頼むよ。」
「水谷さん…!」
瑠華が何かを言おうと引き留めようとしたが、既にその引戸は動いていて虚しくもガラガラと音を立てて閉ざされてしまった。
木製のテーブルに律儀に置かれた釣銭をキッと睨み返し、土方スタイルの女はズカズカと女店主の所へ歩み寄った。
「本当に良いのか、あれで。」
瑠華はふてぶてしく先程男が去って行った引戸の方向に指を指しながら言った。
「…良いんだよ、これで。」
あたかも腫れ物が取れた様な清々しい顔で煙管を手に取り、更かす香音は微笑しながら言う。
只、口角は上がっていても目だけは何処か哀しげなままだった。

