黒猫の香音(前編)



「姐さん…」

「…もう良いんだ、今はそっとしといてくれ。」

しかし…と若い衆が戸惑う。



「大丈夫だっつってるだろ、色々迷惑掛けて悪かった…

また捜すってなったら宜しく頼む、アイツらにも言っといてくれ、『有難う』ってな。」


そう言って哀しそうな面持ちで笑って見せる。



その光景に若い衆は酷く心を痛めた。


「…へい。」



その後は只静かに瑠華を見つめ、項を垂れたまま何かを言う事は無かった。