黒猫の香音(前編)

そう叫んで傍に寄る、余程泣き疲れて寝ているのか車内はエンジン音以外何も聞こえない。


「一人にして御免、さぁ早くお家へ…」



謝りながらすぐに後部座席のドアを開け、陽を強く抱き締める。



…筈だった。




「…?
…陽……?」




妙に静か過ぎるとは思ってた。




でも、まさか、そんな事が…




馨は動揺を隠せずにいる。




それもその筈。






後部座席に確かに乗せていた筈の陽の姿が…




…何処にも『ない』のだ。